Interview 肺がんとCOPD両方の治療により、今は全国を飛び回る生活ができていることが、とてもうれしいです。

このインタビューの内容がすべてのCOPD患者さんに
あてはまるものではありません。
また、患者さんによって適切な治療が異なるため、
必ず医師に相談するようにしましょう。

担当医からのコメント

肺がんの治療と一緒に、COPDの治療も続けていくことで活動的に過ごせることを目指し、予後の改善につなげていくことが非常に大切だと思います。

 COPDの患者さんは、COPDという1つの病気だけを持っている場合と、心不全などの心血管疾患や肺がんなどの他の病気も併存している場合があり、今回のように肺がんとCOPDの両方があるというケースは決してまれではありません。そして、肺がんとCOPDが併存する場合は一般的にはがんの治療が優先して行われますが、私は肺がんもCOPDも両方をきちんと管理していくことが大切だと考えています。こちらの患者さんは肺がんの治療のために放射線治療をしましたが、放射線治療を行うと確実に呼吸機能が落ちます。COPDで呼吸機能が低下している上に、がんの治療によっても呼吸機能がさらに低下するわけです。そうすると、がんの治療をしてせっかく生命を維持できたとしても、患者さんの生活の質は著しく低下してしまいます。
 少し前なら肺がんになると余命1、2年の期間で考えられてきました。しかし、現在は医療が進歩し、肺がんを含めてこれまで重病とされてきた多くの病気が治る時代になっています。ですから、「病気が治った後、その先の10年をどう生きるか」という視点で医師と患者さんが一緒に治療を考えていかなければいけないと思っています。

 「肺がんとCOPDの治療の両方をするのは大変だ!」と思われる患者さんがいるかもしれませんが、肺がん治療のために継続的に病院へ通うため、治療を続けやすいという利点もあります。 また、COPDの治療に取り掛かるタイミングも、“10年後も自分らしく生き生きと暮らしていく”という視点に立つととても大切なポイントです。私はできるだけ早い時期からCOPDを積極的に治療して、日常生活のアクティブさを保つことが重要だと考えています。COPDの症状がないうちは皆さん治療を後回しにしがちですが、息切れがして自由に動けなくなってからでは改善の度合いにも限界ができてしまいます。
 また、症状が進行しているにもかかわらず“息切れがしない”というCOPD患者さんは、実際の日常生活では動いていないことが多いのです。しかし、この「動かない」ことが、病気を進行させ、患者さんの生き生きとした生活を奪ってしまう引き金となります。毎日の生活の中であちこちと忙しく活動されている患者さんを見ると、リハビリよりも良いCOPD治療になっているなと感じます。

 肺がんやCOPDになったから、これはできない、あれはできないと考えて、ご自身の活動範囲を狭めてしまうよりも、こちらの患者さんのように病気をきっかけに新しい気づきや出会いを大切にして、ご自身のやりたいことを見つけてほしいと思います。それが、気持ちも体も動かし続けるための大きな原動力になるのではないでしょうか。